運送業許可の取得の流れ

運送業(一般貨物自動車運送事業)許可を取得して緑ナンバーの車両で営業するためには、主に「人」「物」「金」の要件をクリアしなければなりません。

「人」は運行管理者や整備管理者といった管理者の配置に関するもので、「物」は車両、車庫、営業所、休憩仮眠室といった設備に関するもの、「金」は事業のための資金や保険に関するものとなります。

また、運送業許可を取得するためには、これらの要件を満たした上で、申請書類を作成し、運輸支局へ申請することとなります。

許可取得するまでに、半年から1年ぐらいがおよその目安となっており、かなりの前準備が必要となるのは覚悟しなければなりません。

そのため、ご自身で手続きすることは可能ですが、許可取得の専門家である行政書士に依頼する方が大半となっております。

本記事では、これら許可取得の要件と流れについて解説していきます。

「人」に関する要件

「人」に関する要件
運送業許可を取得するには、主に「人」「物」「金」の3つの要件をクリアしなければなりません。

ここでは、これら3つの要件のうちの一つ「人」の要件について、見ていきましょう。

「人」の要件では、「申請者の法令試験への合格」「申請者が欠格事由に該当していない」「5人以上の運転者」「運行管理者と整備管理者の選任」が必要となります。

申請者の法令試験への合格

運輸支局に運送業許可の申請をした後に、申請者に向けて法令試験が実施されます。

これは、運送事業を行うためには法令の理解を必要とするという趣旨に基づくもので、1回の申請で2回まで受験することができます。

この2回の受験で法令試験を合格しなければ、申請は却下されることとなりますので、法令知識の習得が許可取得の鍵となります。

申請者が欠格事由に該当していない

申請者(個人事業主又は法人役員)が、次の欠格要件に該当すると、運送業許可を取得することができません。

※根拠条文は、「貨物自動車運送事業法第5条」となります。

欠格要件
  • 1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から2年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の通知が到達した日前60日以内にその法人の役員であった者で当該取消しの日から2年を経過しないものを含む。)
  • 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者または成年被後見人であって、その法定代理人が上記のいずれかに該当する者
  • 法人であって、その役員のうちに上記のいずれかに該当する者のあるもの

5人以上の運転者

運転者(ドライバー)は、5人以上が必要となります。

これは、運送業許可の要件として、車両5台以上必要となるため、運転者も車両台数分の配置が必要となります。

運転者は日雇い労働者や短期雇用者ではなく、常時雇用する者の必要があります。

運行管理者と整備管理者の選任

運送業許可を取得するには運行管理者と整備管理者の専任が必要となります。

尚、運行管理者、整備管理者共に常勤である必要があります。

運行管理者

運行管理者の所要人数は車両29台までは1名確保する必要があります。

また、以降30台ごとに1名増員の必要があり、運送業許可を取得するためには最低でも1名以上確保する必要があります。

運行管理者になるためには、運行管理者試験に合格する必要があり、この試験を受験するためには、「1年以上の事業用自動車の運行管理の実務経験」又は「運行管理者基礎講習を修了」する必要があります。

整備管理者

整備管理者の確保が必要となります。

整備管理者になるためには、「一定の資格を持っている」又は「一定期間以上の実務経験+整備管理者選任前研修の修了」する必要があります。

資格で整備管理者になる場合には、1級~3級の自動車整備士資格のいずれかを持っていなければなりません。

また、実務経験で整備管理者になる場合には、整備工場、特定給油所、自動車運送事業者のもとで、点検、整備、整備の管理に関する2年以上の実務経験を積んだ上で、整備管理者選任前研修を修了しなければなりません。

「物」に関する要件

「物」に関する要件
「物」の要件では、主に「営業所・休憩仮眠室」「車庫」「車両」が必要となります。

営業所・休憩仮眠室

営業所は、都市計画法、農地法、建築基準法等の関係法令に違反しないこと、休憩仮眠室を設置していることが要件となります。

都市計画法

都市計画法で特に注意が必要なのが区域です。

次の区域では運送業の営業所として使用できませんので必ず把握しておきましょう。

許可不可の区域
  • 市街化調整区域
  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域

農地法

地目が農地であれば、営業所としては使用できないため、農地転用の手続きが必要になります。

建築基準法

建築基準法違反の建物を営業所とすることは認められません。

また、営業所の使用権限があることが必要となります。(※大家に内緒で又借りをして営業所とすることは認められません。)

車庫

車庫は原則として営業所に併設しているか、近距離内に設置されている必要があります。

また、事業に使用する車両が全て駐車できるスペースが必要で、駐車した状態で車両の点検ができなければいけないため、車両と車両及び車両と車庫の間にそれぞれ50cm以上の隙間を確保する必要があります。

車両

車両は、5台以上が必要となります。

また、車検証の用途が「貨物」になっている必要があり、「乗用」の場合はカウントされません。

「金」に関する要件

「金」に関する要件

「金」の要件では、主に「自己資金」「損害賠償能力」が必要となります。

自己資金

自己資金は、6か月分の人件費・修繕・燃料費と、1年分の車両費、建物・土地費、保険料、各種税等の金額を合計した金額が必要となります。

区分 金額
人件費 役員報酬 役員報酬の6か月分×人数
運転者 給料の6か月分×最低5人
運行管理者 給料の6か月分×最低1人
整備管理者 給料の6か月分×最低1人
修繕・燃料費 6か月分×最低5台
車両費 一括購入は、全額

ローン、リースは、1年分×最低5台

建物・土地費 一括購入は、取得価格全額

分割購入は、頭金+1年分の割賦金

賃貸は、敷金等の初期費用+1年分の賃借料

保険料 自賠責保険料、任意保険料の1年
各種税 租税公課の1年分

損害賠償能力

運送業許可を取得するためには、対人賠償額が「無制限」で、かつ、対物賠償額が「200万円以上」の任意保険に加入しなければなりません。

運送業許可取得までの流れ

運送業許可取得の流れは、次のとおりとなります。

①許可取得要件の確認
許可が取得できるかどうか要件の確認を行います。

②許可申請書の作成
運輸支局に提出する申請書の作成を行います。

③運輸支局へ申請書類を提出
営業所の所在地を管轄する運輸支局に申請書を提出します。

④運輸支局による審査と法令試験
運輸支局で申請書類が受理された後、法令試験が行われます。
この法令試験に合格しなかった場合は再試験の受験が必要となります。
申請書類に不備がなく、法令試験に合格すると審査終了となります。

⑤許可書の発行
審査終了後、許可書が発行されます。

⑥許可後の手続き
「登録免許税の納付」「車両登録」「運行管理者選任届」「整備管理者選任届」など諸手続きを行います。

⑦営業開始
運輸事業の開始となります。

運送業許可に必要書類

運送業許可に必要書類

申請に必要な書類は概ね次のものとなります。(※各支局により異なります。)

必要書類
  • 一般貨物自動車運送事業の経営許可申請書
  • 事業用自動車の運行管理等の体制
  • 事業計画を遂行するに足りる有資格者の運転者を確保する計画
  • 事業開始に要する資金及び調達方法
  • 残高証明書等
  • 事業の用に供する施設の概要及び付近の状況を記載した書類(付近の案内図・見取図・平面図・写真、都市計画法等の関係法令に抵触しない旨の宣誓書、施設の使用権原証明書、車庫前面道路の道路幅員証明書、事業用自動車の使用権原証明書)
  • 法第5条(欠格事項)各号のいずれにも該当しない旨を証する書類
  • 法令遵守の宣誓書
  • 定款及び登記事項証明書(法人の場合)
  • 直近の事業年度の貸借対照表(法人の場合)
  • 役員または社員の名簿及び履歴書(法人の場合)
  • 資産目録(個人事業の場合)
  • 戸籍抄本(個人事業の場合)
  • 履歴書(個人事業の場合)

まとめ

まとめ

いかがだったでしょうか?運送業許可の取得の流れでした。

運送業許可を取得するには様々な要件が必要になります。

また、それに沿っての申請書作成も必要になり、非常に取得難易度が高くなっており、しっかりと法令を学んでおくことが必要となります。

このように、許可の取得においては、あらかじめ専門的な知識を習得しておく必要があります。

しかしながら、日々忙しい中で、これら専門的な知識を身につけるのは、簡単なことではありません。

そういった場合、専門的に手続きを行ってくれる行政書士事務所に依頼するのも一つの手かと思います。

当事務所に依頼すれば、法律的なアドバイスも含め面倒な申請も一任で行わせていただいております。

当事務所は、運送業許可の取得は数多くの実績があり、最も得意としているところです。

行政手続きのプロによる手続き代行を求めているのであれば、是非アカツキ法務事務所へご依頼ください。

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