毒物劇物販売業の立入検査

毒物劇物販売業を登録する場合、行政庁の立ち入り検査が受けることとなります。

この立ち入り検査は、各行政庁により多少ことなりますが、基本的には「登録」「取扱責任者」「譲渡・交付」「運搬」「表示等」「貯蔵設備等」「取扱」「破棄」「事故」「SDS」「その他」の11項目に分類されて行われます。

これらの項目を立ち入り検査でパスすることにより許可が下りることとなりますので、登録申請前は必ず把握しておくことが重要です。

本記事では、これら11項目について、注意すべき点について解説していきます。

登録

登録

  • 登録を受けているか。
  • 農業用品目や特定品目の場合、扱える範囲内のものを扱っているか。
  • 登録事項に変更はないか。

について、確認されることになります。

特に注意する点として次の事項が挙げられます。

移転、全面改装、組織変更(個人⇔法人、組織変更など)などを予定している

営業所の移転や建物の全面改築等の登録事項に変更がある場合や、法人の合併等により、開設者が変更される場合は、新規に販売業の登録を取り直す必要があります。

CHECK
→無許可で販売してしまうおそれがあります。

農業用品目販売業の登録で、水酸化ナトリウムを販売する予定

農業用品目や特定品目で販売業の登録を受けている場合で、新たな品目を取り扱う際は、その品目が取り扱える品目かどうか確認する必要があります。

CHECK
→制限品目を販売してしまうおそれがあります。

氏名又は住所や店舗の名称、設備の変更

法人名称や法人本社の変更、営業所名称の変更には変更届が必要です。

また、保管設備の変更(事務所内での設備の移動)も同様に対象です。

変更事項が生じた際委は、変更後30日以内に手続きをする必要があります。

CHECK
→変更後30日以内に変更届の提出が必要になります。

取扱責任者

  • 責任者の勤務状況は適切か。
  • 変更した場合は届出を提出しているか。
  • 毒物劇物を適切に管理しているか。

について確認されることになります。

特に注意する点として次のとおりとなります。

取扱責任者が変わった場合は取扱責任者変更届を30日以内に提出する必要があります。

また、取扱責任者の勤務状況や管理状況は適切かを確認してください。

CHECK
→変更後30日以内に変更届の提出が必要となります。

譲渡・交付

  • 譲渡や交付時に、帳簿の記載若しくは譲受書の提出は受けているか。
  • 帳簿や譲受書は5年間保管しているか。
  • 譲渡や交付してはならない者へ販売していないか。
  • 特定毒物の譲渡先は適切か。
について確認されることになります。

特に注意する点として次のとおりとなります。

譲渡する場合の注意事項

使用目的や身分証明等の確認が必要な場合があります。

また、販売業者が必要な記載事項が記載された書面(譲受書)の提出がなければ、販売授与できません。

営業者同士の場合

販売者は、書面(帳簿)に以下の事項を記入してください。

毒物又は劇物の名称及び数量

販売又は授与の年月日

譲受人の氏名、職業及び住所(法人にあっては、その名称及び主たる事 務所の所在地)

営業者以外の場合

譲受人から以下の事項を書き入れた書面(譲受書)の提出を受けてから販売してください。

毒物又は劇物の名称及び数量

販売又は授与の年月日

譲受人の氏名、職業及び住所(法人にあっては、その名称及び主たる事 務所の所在地)

CHECK

→譲受書に記載漏れや印漏れがないことを確認し、5年間保存してください。

購入者が18歳未満でないこと、使用目的に不審な点がないこと、安全な取扱いに不安がないことを確認してください。

→法第3条の4に定める引火性、発火性または爆発性のある毒物又は劇物であって政令で定めるもの(ナトリウム、ピクリン酸等)は身分証明書などを確認した上でないと販売できません。

→販売記録からは販売したことが確認できるので、再確認の上、譲受書を入手する必要があります。

毒劇物の交付制限

毒劇物は、18歳未満の方や、麻薬・大麻・あへん又は覚醒剤の中毒者、精神の機能の障害により毒物又は劇物による保健衛生上の危害の防止の措置を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者には交付できません。

CHECK
→販売の際、相手に不審を感じたら販売をせずに、警察に連絡しましょう。

運搬

運搬

  • 荷送人の通知(1トンを超える場合)
  • その他運搬基準が守られているか
  • 飛散・漏れ・流れ出等の予防措置

ここでは、①1回につき1トンを超える量の毒劇物の運搬を他に委託している場合、運送人に対して、毒劇物の名称、成分、含量、数量、事故時の応急措置の内容を記載した書面を交付しているか、②特定の毒物を運搬する場合、車両への標識、防護具、必要事項が記載された書面等を備えているか、③運搬時に、飛散、漏れ、流出等の予防措置が取られているか

について確認されることになります。

表示等

  • 貯蔵場所
  • 容器及び被包
  • 着色、品質の基準が守られているか

ここでは、①貯蔵場所に表示をしているか、②容器及び被包の表示は適切か、③着色、品質の基準が守られているか

について確認されることになります。

貯蔵設備等

  • 他の物との区別
  • 飛散、漏れ、しみ出等の恐れ
  • 鍵の設備又は周囲に堅固なさく
  • 変更に際しての届出をしているか

について、確認されることになります。

特に注意する点として次の事項が挙げられます。

他の物と区別されているか

他の物との区別及び専用の保管庫で保管する措置を講じる必要があります。

CHECK
→その他の物を貯蔵、陳列等する場所と明確に区別された毒劇物専用の保管庫にしましょう。

貯蔵設備の拡張等に伴う手続き

毒劇物の取扱量に応じた保管設備を設けることが望ましいです。

保管設備が狭い場合、無理に詰め込んでしまい、混触禁止物質を並べて保管してしまう事例や保管庫外に置かれてしまっている事例が見受けられます。

CHECK
→取扱量が増加していれば、保管庫の拡張等を行い、その変更を届出ましょう。

貯蔵設備

貯蔵設備は、以下に沿い設ける必要があります。

堅固な設備とすること。

CHECK
→堅固な設備とは簡単に割れたり壊れたりしない頑丈な設備のことです。 扉などがガラス製で、すぐに割られてしまうようなものは、貯蔵設備とし ては適切ではありません。

毒劇物以外のものと区別していること。

盗難防止の観点からの鍵のかかる設備があること。

流出、漏えい等の事故を防止するための設備とすること。

CHECK
→タンク、ドラム缶等を使用している場合は、ひびや腐食等の劣化がないか確認する。 盗難防止や震災対策のため、貯蔵設備を固定する。 棚の中に仕切り板を設けて、毒劇物が入った容器が転倒しないようにする。

「医薬用外毒物」「医薬用外劇物」の表示をすること。

取扱

取扱

  • 盗難、紛失に対する予防措置
  • 飛散、漏れ、流れ出等の予防措置
  • その他の取扱について

について、確認されることになります。

特に注意する点として次の事項が挙げられます。

盗難や紛失に対する予防措置

盗難や紛失を防ぐためには、日々の取扱いから注意を払うことが必要です。

特に、貯蔵設備が要件を満たしていたとしても、常時施錠をしていなかったり、施錠をしていたとしても、鍵がすぐ横にかかっていたりすると、管理上適切ではありません。

CHECK
→鍵の管理については次の点に注意しましょう。

鍵の管理者を明確にすること。鍵が複数ある場合は、鍵の数量のチェックを定期的に行う。鍵を使用する場合は、責任者の許可を得るなど管理を徹底すること。かぎの管理者不在時も、同様の管理を徹底すること。

その他の取扱について

毒劇物を飲食物の容器に入れてはなりません。

CHECK
→飲食物容器の使用禁止。

誤飲等の事故を防ぐため、毒物劇物の容器として、飲食物の容器を使用することは禁止されています。これは、毒物劇物業務上取扱者においても同様となっておりますので、毒物劇物を販売される際は、購入者に対して注意喚起をしましょう。

また、その他次のことにも注意しましょう。

  • 毒劇物の中には温度管理が規定されていることがあります。その場合は、規定された温度での保管する必要があります。
  • 毒劇物は廃棄するまでは鍵のかかる場所に保管しておきましょう。

廃棄

  • 届出をしているか
  • 事故の際、必要な応急措置をしているか

事故が発生した際、警察署、消防署又は保健所に届出を行っているか、②事故の際、必要な応急措置をしているか、を確認されます。

事故が発生してしまうと、現場では混乱が生じてしまうことが考えられますので、事前に連絡場所を明確にしておいたり、発生時の体制を整備してお くことが重要となります。

事故の際の措置①

万が一、事故が発生してしまった場合、以下のような対応が求められます。

  • 毒劇物の流出や漏えいにより、不特定または多数の人に保健衛生上の危害が生じるおそれがあるときには、被害の拡散を抑えたり、付近の住民を避難させたりすることが必要です。
  • 直ちに、消防署、警察署または保健所への連絡が義務付けられています。
  • 毒劇物は、少量であっても犯罪等に使用されると死亡事故につながりますので、量に限らず、盗難、紛失した場合は、必ず警察署へ届け出ることが義務付けられています。
CHECK
→流失・漏洩は直ちに消防署、警察署、保健所へ、盗難・紛失の場合は直ちに警察署に連絡しましょう。

事故の際の措置②

事故が発生した場合は、関係各署へ緊急連絡することに加えて、応急措置を取ることが求められています。

いざ、事故が発生すると、混乱してしまい、適切な対応が取れない可能性もあります。

このため、応急措置として、万一の事故に備えて、除害剤の土砂などを備えておくことや、日ごろから訓練などによる社員の教育訓練を実施することが重要となります。

CHECK
→万が一に備えて従業員の教育や訓練を実施したり、土砂、消石灰等の除害剤を備えておく。

SDS

SDS
SDSを販売先に交付しているか確認されます。

毒物劇物営業者は、毒物劇物の取扱いに関する情報(SDS)を購入者に提供することが義務付けられています。

SDSの提供については、文書又は購入者が承諾した方法となっており、邦文での提供が求められています。

購入者に対して適切に情報提供できるように、販売している品目については、最新版のSDSを製造・輸入元から入手しておくことが望ましいです。

その他

  • オーダー販売における注意事項
  • 毒物劇物危害防止規定

について、確認されることになります。

特に注意する点として次の事項が挙げられます。

オーダー販売

直接、毒物劇物を取り扱わないため、取扱責任者の設置は不要となりますが、販売業の登録は必要となります。

オーダー販売は、直接毒物劇物を取り扱わないことが大前提ですので、毒物劇物の保管や運搬は認められません。

CHECK
→現物保管や配送は認められません。

▼オーダー販売についての詳細はこちらをお読みください▼

毒物劇物販売業のオーダー販売とは

2021年1月7日

毒物劇物危害防止規定

毒物劇物の管理・責任体制を明確にし、保健衛生上の危害を未然に防止することを目的として、毒物劇物危害防止規定を定めるよう、「毒物劇物危害防止規定について」の通知で定められております。

CHECK
→また、社内の連絡体制や毒物劇物の保管管理方法・取扱方法については、従業員への周知する必要があります。

また、その他に次の規定も必要となります。

  • 毒物劇物の盗難や紛失を防止するため、管理簿による在庫管理を行う
  • 漏洩などの事故を未然に防止するため、タンク等の貯蔵設備を点検し、記録する
  • 保管庫転倒防止措置を施し、震災対策を行う

まとめ

まとめ

いかがだったでしょうか?毒物劇物販売業の立入検査の解説でした。

立入検査は新規許可取得や更新の際には必ず行われます。

しっかり理解したうえで、許可の取得に備えることが重要です。

このように、許可の取得においては、あらかじめ専門的な知識を習得しておく必要があります。

しかしながら、日々忙しい中で、これら専門的な知識を身につけるのは、簡単なことではありません。

そういった場合、専門的に手続きを行ってくれる行政書士事務所に依頼するのも一つの手かと思います。

当事務所に依頼すれば、法律的なアドバイスも含め面倒な申請も一任で行わせていただいております。

当事務所は、毒物劇物販売業の許可取得は数多くの実績があり、最も得意としているところです。

行政手続きのプロによる手続き代行を求めているのであれば、是非アカツキ法務事務所へご依頼ください。

毒物劇物販売業登録の手続きはあかつき法務事務所へ 毒物劇物販売業登録の手続きはあかつき法務事務所へ

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