本記事では、相続手続きをする上で、必ず知っておきたい民法の基礎知識を解説しています。解説は相続手続きを専門としている行政書士がします。
目次
民法総則とは
民法総則とは、数多くある民法上法律行為の土台や基礎となる行為、規定が定められている部分を指します。
民法総則は、民法の第1条~第174条の2までの規定となります。
民法は、いくつかの編に分けられているのですが、その中の1つだと想像して頂ければわかりやすいと思います。
その編の中でも、下記の章に分けられ、さらに節に細分化されます。
- 第1章である「通則」
- 第2章の「人」
- 第3章の「法人」
- 第4章の「物」
- 第5章の「法律行為」
- 第6章の「期限の計算」
- 第7章の「時効」
民法総則にはどんな事が書かれているのか?
では、第1条の通則の「権利濫用の禁止」について、想像しやすくできるために、例を上げて解説していきます。
権利濫用の禁止とは、民法はそもそも自分の権利だからと言ってなんでも許されると言うわけではないとされている規定のことをいいます。
また、第1条第3項にある「権利の乱用はこれを許さない」とあります。
これは、例え権利があったとして、それを行使しようとしても、その目的自体が社会的に見て妥当ではないと判断される場合、権利の行使自体を認めないとされているもので、実際に有名な裁判の判例があるので、解説していきます。
宇奈月温泉事件とは
その裁判は「宇奈月温泉事件」と言って、名前までついてしまった程有名な裁判事例であり、法律の教科書によく取り上げられています。
富山にある温泉の話になるなのですが、そこの温泉のお湯は、別の離れた温泉から、引湯管によって引かれていました。
その土地を利用する権利を得た上でこの管は敷設されていたわけですが、その管が通っている土地を、ある土地の持ち主から買い取った人がいました。
このある土地を買い取った人が、温泉の経営者に対し、不法占拠だと言ってその温泉の管を撤去するように迫ったのです。
さらに、撤去しないのなら、周りにある荒れた土地と一緒に高額な値段で買い取るように、当時の地価をはるかに超える金額で購入するよう迫りました。
当然の事ながら困った温泉の経営者は訴訟を起こすことになるのですが、判決は権利濫用禁止の原則により、温泉の経営者が勝訴することになります。
この事からわかるように、例え自分の持っている権利だからと言ってなんでもかんでも通用するわけではないと言う事です。
民法の総則にはあらゆる範囲に該当しますが、民法ではこのような規律も存在しているという事で、民法総則の中の一例として上げさせて頂きました。