昨今では、社会保険に加入していない建設作業員の現場規制が厳しくなっています。
いわゆる「建設現場の入場規制」です。
当事務所でもよく、建設業者から社会保険についてのお問い合わせがあります。
これは、少子高齢化に伴う社会保険の財源確保のための国政からの要請となります。
そのため、今後さらなら締め付けが厳しくなっていくことが予想されます。
本記事では、これらよくある質問をもとに建設業の社会保険とその問題点についてまとめ解説していきます。
目次
建設業許可は社会保険加入が必須!?
適切な社会保険への加入は、建設業許可の要件です。
そのため、加入していない場合は建設業許可を取得することができません。
そもそも建設業界の人員不足を解消するために若年就労者の労働環境を安定化させることも目的の1つになっているので、社会保険加入については、国政として重要な事項になっています。
また、建設業許可業者以外の建設業者でも社会保険が未加入が発覚すれば、自治体からの厳しい指導が待っています。
詳しくは次の記事をご覧ください。(⇒社会保険に未加入ならどうなる?)(⇒雇用保険に未加入ならどうなる?)
建設現場の入場制限
建設業者の社会保険(健康保険、厚生年金等)に関しましては、国政により段階的に対策が進められています。
また、平成29年4月からは「社会保険加入に関する下請指導ガイドライン」により、社会保険未加入の作業員は現場入場を認めるべきではないという見解が示されており、社会保険に加入していない作業員の入場規制がより厳しくなってきています。
建設現場に入場するために、社会保険に加入する建設業者も多くなってきているのが実情です。
弊所によくお問い合わせは、こういった「建設現場の入場制限」についてが、多くを占めます。
また、社会保険と聞くとどうしても会社で入る保険としてのイメージがありますが、一人親方も例外ではありません。
一人親方が社会保険に加入するには、属する会社に社会保険の加入を要望するか、若しくは自ら法人を設立して加入する必要があります。
しかし、属する会社に社会保険の加入を求めたとしても、なかなか応じることができないのが現状となっております。
そのため、社会保険に加入するためわざわざ法人化する一人親方も少なくはありません。
社会保険加入に関する下請指導ガイドライン
(参考:国土交通省より)
国土交通省が定めた「社会保険加入に関する下請指導ガイドライン」とは、建設業における社会保険の加入について、元請及び下請けがそれぞれ負うべき役割と責任を明確にしたものです。
このガイドラインに定められている元請・下請のそれぞれの役割と責任に概要は次のとおりとなります。
元請の役割と責任
下請について保険加入の確認・指導
- 選定の候補となる建設業者について社会保険の加入状況を確認し、未加入である場合には、早期に加入手続きを進めるよう指導する。
- 社会保険に全部又は一部に適用除外ではなく未加入である建設業者を下請として選定しない。
現場に入場する作業員について保険加入の確認・指導等
- 新規入場者の受入れに際して、作業員名簿の社会保険欄を確認し、未加入が発覚した場合には、作業員名簿を作成した下請に対し、作業員を適切な保険に加入させるよう指導する。
- 適切な保険への加入が確認できない作業員について、特段の理由がない限り現場入場を認めない。
法定福利費の適正な確保
- 見積時から法定福利費を必要経費として適正に確保する。
下請の役割と責任
雇用する労働者の適切な社会保険への加入
- 労働者である社員と請負関係にある者の二者を明確に区別し、労働者である社員についての保険加入手続きを適切に行う。
元請企業が行う指導等への協力
法定福利費の適正な確保
- 法定福利費を適正に見積もり、法定福利費を内訳明示した見積書を注文者に提出する。
建設業許可取得・更新で必要な書類
これらの書類をもって、社会保険に適切に加入しているか確認されます。
健康保険・厚生年金保険
ア 健康保険(全国健康保険協会)に加入の場合
- 納入告知書 納付書・領収証書の写し
- 保険納入告知額・領収済通知書の写し
- 社会保険料納入確認(申請)書(受付印のあるもの)の写し
- 健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書
イ 組合管掌健康保険に加入の場合
- (健康保険について)健康保険組合発行の保険料領収証書の写し
- (厚生年金保険について)上記アのいずれか
ウ 国民健康保険に加入の場合
- (厚生年金保険について)上記アのいずれか
雇用保険
- 「労働保険概算・確定保険料申告書」及び「領収済通知書」の写し
- 「労働保険料等納入通知書」及び「領収済通知書」の写し
健康保険・厚生年金保険
・法人又は家族従業員を除く従業員が5人以上の個人事業主の場合は、原則適用事業所になります。
・健康保険については、適用事業所であっても、事業主が健康保険適用除外承認を申
請し、年金事務所が承認した場合、適用除外承認を受けることができます。(全国土木建築国民健康保険組合等)
雇用保険
・1人でも労働者を雇っている場合、法人、個人事業主の別なく雇用保険の適用事業所となります。
・法人の役員、個人事業主、同居の親族のみで構成される事業所の場合、雇用保険は原則適用除外となります。
建設業の労災保険の仕組み
建設業許可の新規申請、更新申請の時、確認されるのが社会保険の中でも「厚生年金」「健康保険」「雇用保険」のみにとどまり、「労災保険」の確認はされません。
これは、建設業が二元適用事業にあたるためです。(⇒一元適用事業と二元適用事業の違い)
建設業の労災保険は、その建設工事の元請業者が加入する労災保険により、その元請業者の労働者はもちろん、下請業者の労働者の労働災害についても補償します。
そのため労災保険は元請業者が一括して加入することとなります。
これが一般的な会社の労災保険の仕組みが大きくことなる点となります。(⇒建設業の労災保険の仕組み)
■用事業と二元適用事業では労働保険番号が異なります。(⇒覚えると便利!労働保険番号14桁の意味」)
また、労災保険には大きな問題点もあります。
労災保険は従業員のための保険となります。
そのため、社長や一人親方が現場でケガをしても、保険金が下りないのです。(⇒社長がケガをしたら労災保険はどうなる?)
建設業許可取得を依頼する
いかがだったでしょうか?建設現場の社会保険未加入における入場制限の解説でした。
このように建設業許可を取得するためには、あらかじめ専門的な知識を習得しておく必要があります。
しかしながら、日々忙しい中で、これら専門的な知識を身につけるのは、簡単なことではありません。
そういった場合、専門的に手続きを行ってくれる行政書士事務所に依頼するのも一つの手かと思います。
当事務所に依頼すれば、法律的なアドバイスも含め面倒な申請も一任で行わせていただいております。
当事務所は、建設業許可の許可取得は数多くの実績があり、最も得意としているところです。
また、建設業許可の取得代行はもちろん、決算変更届や変更届などの各種手続きをフルサポートさせていただいております。
行政手続きのプロによる手続き代行を求めているのであれば、是非アカツキ法務事務所へお任せください。